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101 非を認めるのは接客の基本

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Released Sunday, 12th May 2024
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「適切に」という点が問題です。私たちはよく「常識」と言いますが、そうは言っても実際には普通でないことがほとんどです。「適切」もそれにちょっと似ています。私たちが適切だと思うことが、他人にとってはそうでなかったりするのです。この違いが、接客業で物事を難しくしてしまう点です。何かうまく行かなかったときにとるべく、双方にとって適切な対応とは何でしょうか。被害を被った方は完全に感情的になり、言葉の堰を切ったように問題を起こした接客担当者を激しく非難します。

近年、日本の人口の30%近くが65歳以上であることを考えると、将来私たちの周りには、提供されたサービスが「適切」でないとすぐに怒り出す短気な高齢者であふれかえることが予測できます。このように、日本の高齢化が進んで、短気で他人の振る舞いによって簡単にイラつく人が増えてきたため、今や接客業界は大混乱に陥っています。

私の友人の1人で、あるIT関連の仕事でひどいサービスを受けたと嘆いている人がいました。このプロジェクトは予定より9か月間も遅れ、ようやく完了にこぎつけたものの、まったく正常に機能しませんでした。誰しもIT関連の仕事はたいてい約束よりも長くかかり、費用も多くかかるものだと分かってはいますが、少なくとも機能はするものだと思っています。こうなってしまった理由はたくさんあることでしょう。指示が曖昧だったり、進め方に問題があったりしたのかもしれませんし、何か酌量すべき状況があったのかもしれません。それとも単に能力に欠けていただけなのかも

私は日本のある銀行に勤めていたことがありますが、当時、海外の業者に依頼して作った新しい社内オペレーティング・プラットフォームがまったく機能せず、立上げ後すぐに撤廃になり、非常に多額のお金が無駄になったということがありました。うまく行かなかった理由を突き詰めてみると、原因の所在は不明、つまり誰にも責任がないということでした。クビになる人は誰もいなかったし、何の教訓も得られず、まるで何もなかったかのように臭いものに蓋をしてさっさと忘れられていったのです。

それはともかくとして私の友人の話に戻ります。彼の場合はむしろそのITサービスのプロバイダの対応に戸惑っていました。相手の返事がまったくなかったからです。それどころか、驚くことにミスを犯した本人は立場を逆転させ、私の友人に非があるのだと責めたのです。この対応は正しくありません。これを真似してはいけません。

困って連絡してきた電子メールやメッセージ、電話に返答しないのは、相手の感情を逆撫でします。相手は侮辱されたと感じ、イライラすることでしょう。ですから、まず第1の教訓は、相手が問題を解決しようとした時に、あなたと簡単に連絡がとれるようにすることです。提供しているサービスで問題が発生した場合の連絡先として、あなたの名前がウェブサイトに記載されていれば、上司に直接苦情が行くことなどという状況にはならないでしょう。日本では、従業員たちはみんな忍者のように失敗を上司に知られないようにするので、上司に伝わるのは後になってから、たいてい、まったく手遅れになったときです。

また、問題について遠回しに話してはなりません。買い手側の視点に立って話をできないのなら、そのことを認めましょう。人はそれぞれ感じ方も考え方も違うからです。認識の仕方、つまり顧客がどのようにとらえているかが重要なのです。金銭が関係することは明らかですが、それよりももっと貴重なもの、すなわち信用が関わってきます。なんとか責任を何とかして逃れようとすると、さらに大きな問題が待ち受けることでしょう。この友人は人脈がとても広いのですが、彼のことを信用する人たちに対して、このプロバイダのサービスについてよく言うことは決してないでしょう。これは信用低下につながり、それによって収益に悪影響し、最終的には損益計算書に、目に見えない損失として計上されることになるのです。今はそのことは見抜けないかもしれませんが、いずれ必ずそうなることを私は保証します。

他の話を思い出しました。私の知っているあるビジネスマンは、インターネット上でかなりの有名人です。彼の名前をGoogleで検索すると、騙されたと感じたいろんな人たちからの怒りの投稿がいくつか見つかります。あなたとビジネスをしようと思う人たちがこのような悪い評判を見たら、あなたのビジネスは永遠におしまいとなってしまうことでしょう。

たまに、ひどいサービスを提供したのに何の責任も取らない人がいますが、そういう人たちには驚かされます。最近、私の息子は麻布十番のラーメン屋で、器に入ったタレを身体にかけられてしまいました。この店員はアジア系の女性でしたが、日本人ではありませんでした。店内一同が唖然としたことに、彼女は何もせず、ただそこに突っ立って「今何が起こったのだろう」といぶかしげに見ているだけでした。謝罪の言葉もなく、慌ててタオルでタレを拭き取ろうともしませんでした。本当にまったく何もしなかったのです。

かわりに日本人の店長が必死に謝り、やっとタオルを持ってきてタレを拭き取りました。当の店員と言えば、奥に引っ込んでまるで何もなかったかのように肉を焼いています。日本語や英語が話せないからなのか、それとも単なる愚か者なのか。一体何を考えているのでしょう。

彼女にとっては、タレをかけた相手が短気なお爺さんでなかったのは幸いでした。もしそうなら厳しい罵声が彼女にだけでなく、店長にまで浴びせられ、他の客の前でひどい辱めを受けたでしょう。店を出るときには店長だけがドアに来てお辞儀しながら謝って見送ってくれました。例の非常識な店員はいったいどこにいるのでしょう。こんな騒動を起こして、申し訳なく思いながらそこに立っていなければならないのは彼女のはずです。

ミスはいつでも起こるものですが、肝心なのは、ミスを犯したら責任を取るように従業員をしっかり教育することです。こういった飲食店では必ずハプニングは起こるはずなのに、この若い女性はそのような対処法に関するトレーニングなどまったく受けずに働いているのです。彼女は、最近増えてきた日本の飲食店や小売店での人手不足を埋めるために雇われた、例の低賃金・時給制の外国人「研修生」の1人だったのかもしれませんが、そこが問題ではありません。求める基準は高いが寛容度は低いという、世界で最も厳しい小売環境の1つである日本で働くには、このような外国人研修生であっても、接客トレーニングを受け、きちんと対応ができるようにならなければなりません。

ではここで自分たちのことを振り返ってみましょう。貴社ではミスやトラブル、混乱、事件、事故などが起きたときに、あなた自身や従業員が適切に対処する準備はできていますか? 「適切な」行動を取るであろう、と、各人の常識や能力に頼っていてはなりません。彼らに対して、そのように行動する「理由」を明確に伝え、あなたの組織の「価値観」を説明し、被害を被った顧客の目線に立ち、どのようにトラブルに対処したらよいかについて彼らをトレーニングする必要があるのです。そして、これは口が酸っぱくなるほど言い続けなくてはなりません。何度も聞かされてはじめて彼らに浸透するのです。

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