僕のふるさとの街は、陽気で賑やかで明るい。けれど僕は静かで冷ややかな空間が好きだ。人嫌いで出不精。そんな僕の心に風を吹かせたのは、一冊の本。激動の時代に小さな国を根こそぎ変えた男たちの物語。彼らの革命は、僕の人生にも革命を起こした。僕の街から一本のバスでつながっている。彼らが生きた、あの土地へ。ふるさとを離れたことのない僕が勇気を出して買った「坂の上の雲」への切符。ページをめくるように旅をしてみよう。こんなに長くバスに揺られたのは初めてだ。そっと目を閉じると、白くきらめく雲が風にのってたゆたう。そのきらめきは、すぐ近くにあった。僕の手の届くところに。開いた目の先に、松山城の天守閣。新しい風が、また吹き抜ける。