『価値論:人類学からの総合的視座の構築』
デヴィッド・グレーバー |藤倉 達郎・訳|以文社|2022年12月2日
朗読箇所:第7章「私たちの夢の偽硬貨、またはフェティッシュの問題IIIb」より(P.377~388)
『負債論』(2011)そして『ブルシット・ジョブ』(2018)などの著作でその名を世界中に轟かせたデヴィッド・グレーバーが2001年に出版したデビュー作(Toward an Anthropological Theory of Value)の待望の翻訳。
本作は、グレーバーが博士論文の出版を後回しにしてまで自身の課題に取り組んだ「最初の主著」であり、また彼のライフワークともなった「価値の総合的理論の構築」へ向けた「最初の一歩」である。
デビュー作とは思えない(あるいはデビュー作ゆえの)博覧強記で、これまでの彼の著作以上に読者を困惑させるその筆致=思索には、のちに数々の作品で「価値転覆」的な発想をもって世界を驚かせてきたグレーバー思想のエッセンスが集約されており、徹頭徹尾「エコノミズム(経済主義)」批判に貫かれた本書において、その概念に対置された「コミュニズム」は一体いかなる像を結ぶのか?
シカゴ大学人類学科でグレーバーと同僚だった藤倉達郎氏によるリーダブルかつ正確な翻訳でお届けする、グレーバー思想の源流。
【目次】
序にかえて
第1章 価値を語る三つの方法
クライド・クラックホーンの価値プロジェクト
利益を最大化する個人
構造主義と言語学的な価値
結論
第2章 交換理論の現在の潮流
マルクス主義の興隆とその後
経済人の再来
アパドゥライの「価値の政治」
補足的説明──アネット・ワイナーの譲渡不可能なモノ
ストラザーンのネオ・モース派アプローチ
マルクス主義による批判、モース派の返答
総合に向けて?
ナンシー・マン──行為の価値
結論(なぜこんなに行為が少ないのか?)
第3章 行為の重要性としての価値
西洋的伝統の裏面
マルクスの価値論
「人間行為論的(praxiological)アプローチ」
動態的構造
自己中心性と部分的意識
象徴分析としての『資本論』
市場なき社会
バイニング―生産と実現
カヤポ―家庭内サイクルと村の構造
価値のト ークン(しるし)
価値、価値観、フェティシズム
第一の覚書──否定的価値
第二の覚書──直接的収奪と間接的収奪
結論──千の全体性
第4章 行為と反影、あるいは富と力の理論へむけての覚書
富の誇示
行為(action)と反影(reflection)
「貨幣」対「硬貨」
フェティシズムのさまざまな種類
マダガスカルと奴隷貿易
オディとサンピィ
供犠とお守りの創出
政治的次元、あるいは儀礼的生贄としての税
展望と結論
第5章 ワンパムとイロコイの社会的創造力
ワンパムの起源
名前の復活
戦争と社会構造
平和をつくる
「偉大なる平和」の起源
循環と歴史
創造と意図性
夢の独裁
真冬の儀式と白犬の生贄
夢の経済
第6章 マルセル・モース再訪
社会契約としての贈与
社会主義理論への貢献としての『贈与論』
モノと人
事例1──クラの腕輪と首飾り
マオリとクワキウトル
事例2──アオテアロアにおける贈り物
事例3──クワキウトルのポトラッチ
結論Ⅰ──いくつかのものごとの解明
結論Ⅱ──政治的および道徳的な結論
第7章 私たちの夢の偽硬貨、またはフェティッシュの問題 Ⅲb
王と硬貨
再考
魔法とマルクス主義
魔法と人類学
魔法的な態度と宗教的な態度
クトゥルフの建築家
結論
マルクス対モース、ふたたび
謝 辞
『価値論』の背景と概説─訳者あとがきにかえて
シカゴ大学の人類学
本書の概説
本書執筆前後のグレーバー及び本書翻訳の経緯
http://www.ibunsha.co.jp/new-titles/978-4753103713/
企画・朗読:若林恵
録音・編集:山口宜大(Magic Mill Sounds)
音楽:yasuhiro morinaga + maiko ishii
書影撮影:Kaori Nishida
黒鳥福祉センターにて収録
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