今回は、井戸短歌会特別編をお送りします!
参加者の皆さんには、以下の三つの質問に対する答えをそれぞれ考えてきてもらいました。
(一)自分が詠んだ短歌で気に入っているものは?
(二)その短歌ができあがった経緯は?
(三)あなたにとって短歌とは?
パート1はじょーじ、たくや、ひかるの三人に話してもらっています。ぜひお楽しみください!
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【じょーじ】のターン
連れ出して、空いっぱいの星を見せ 「家族になる」 そんな約束
- 旧約聖書創世記15章5〜6節の「アブラハムへの約束」より。
- 聖書をビジュアリーに表したい。
- 中高科に向けたメッセージを準備するなかで短歌にした。
- 短歌にするのと、情景を決めるのと、ことばを決めるのが同時。
- リズムやテンポについてもこだわりをもって作った。
燃え尽きぬ 柴を前にして 靴を脱ぐ ような気持ちで 赤紅葉前
- 旧約聖書出エジプト3章2〜5節の場面より。
- 聖書の場面(物語)と日常の場面(物語)を重ねたい。
- 気持ちの描写から入る。モーセの厳かな場所に立っているという気持ちから入りたいと思って作った
- 五七五でしゃべる能力が日本人には備わっているらしい、とりあえず作ってみるのが大事。
造られて 良いと言われた 主の愛は 恵みの中で この日にいたる
- 聖書の全体を表すような一首。
- 義理の姉夫婦に送った短歌で、二人の名前が歌に入っている。
- 短歌は端折って当たり前、読者が想像力を膨らませる前提が強くある。
「て!」と出す 君の右手は 冷たくて 僕の手で少し 温(ぬく)めてからゆけ
- 日々の生活を切り取る「日記短歌」と読んでいる一首。
- 短歌は「文字数」よりも「リズム」で考えている。
- 「て!」に込められた「耳で聞く」ではわからない文字の工夫。一文字にたくさんの情報が詰め込まれている。
『憎しみで作られた歌が救われた 君が救われたなんていうから』 (MOROHA 六文銭)
- 二人組のラップグループの歌に出てくる歌詞の一節を短歌にした「企画短歌」の一つ。
- 歌の歌詞を短歌にすることで、その歌詞を深く味わい、「ここに引っかかった」という部分を切り取って短歌に閉じ込めることができる。
じょーじにとっての短歌とは「思い出を切り取るもの」そして「ラブレター」
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【たくや】のターン
イーロンは宇宙に人を打ち上げた 夕日へゆっくり飛ぶフリスビー
- お題に対して一首を作り、そのお題を出してくれた人にその歌を贈る「あなたのための短歌」スタイルで詠んだもの。
- 「穏やかさ」の対比になるキーワードを探しながら作っていった一首。
- 具体性が高い固有名詞(人名など)ほど伝わりやすい気がする。
- 上の句に強烈なインパクトがあるため、あえてベタともいえる「夕日」を使うことにした。
- 助詞などを抜くことなく、自然な文章らしく読めるような歌を作るのが好き。
- 短歌について説明するときは、俳句と比較することが多い。
- 短歌のほうが自分の気持ちを入れやすく、上手・下手をそれほど気にせずに作ることができる気がする。
たくやにとっての短歌とは「楽しく人と会話するためのアート」
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【ひかる】のターン
妻のスマホ 謎めく通知心くすぐる 自分のは見せぬ秘密の箱庭
- 「恥と罪悪感について」というテーマについて詠んだ歌。
- 思いついたことを心に留めるなりメモを取るなりするようにしている。
- 聖書の箇所などをもとに短歌を作りたいと思っている。
- そこから日常生活とのつながりを見出せるとおもしろい。
- とりあえず書いてみて、言い換え表現をネットで調べたり、辞書を引いたり、ChatGPTを利用したりして完成させていくスタイル。
- スマホの「言い換え」として箱庭を使うことで、謎っぽさが出たのではないかと思う。
「秋はどこ?」変化の激しい 寒暖差 まだ緑色 葉っぱの気持ち
- 下の子を抱っこしながら散歩しているときに思いついた歌。
- 自分が思っていることを、生物ではない「葉っぱ」の擬人化をとおして表現してみた。
ひかるにとっての短歌とは「自分が思考しているものの曖昧な言語化」